どうやってEUにエスペラント語を導入するか

『どんな真理も三つの段階を経る。まず嘲笑され、次に激しい反対に遭い、最後に自明の真理として認められるのだ。』

アーサー・ショーペンハウアー (Arthur Schopenhauer) 哲学者

エスペラント語がEUの公用語になったときには、特にエスペラント語が簡単に学べるという理由から、10年もすると英語やその他のEUの言語にとってかわる主要な言語になるでしょう。

今こそ決断の時

現在、EUには20の実務公用語があります。私個人としては、2007年以降はエスペラント語を最後に、それ以上の公用語を増やすべきではないと考えます。2007年以降EUに加盟する国は、エスペラント語もしくはその他の公用語を使い、書類を自国の言葉に翻訳したい場合は、自分たちの任意で行うことにすべきです。

多大な利益がもたらされることでしょう。一旦、国際実務言語として社会的な地位を獲得してしまえば、エスペラント語への関心は、ヨーロッパを問わず、世界中の他の国々でも急速に高まるでしょう。

決断しないことも決断のうち

何も決めなければ、何も決めないことによる経費が毎年増え続けるばかりです。

コンピュータだって翻訳できる

エスペラント語は論理的な言語であり、同意語が少なく、単語一つ一つの意味が明確です。このため、仲介言語として、特にコンピュータで翻訳しやすい言語なのです。

エスペラント語では、新しい言葉や表現を造り出すことは、百年以上も前から行われてきました。他の言語よりエスペラント語の方が、構造上、簡単に造語を生み出せる仕組みになっています。

ヨーロッパがエスペラント語を学ぶ

2008年以降、EUのすべての学校にエスペラント語を第一外国語として導入するという考えも、そう非現実的なことではありません。語学教師なら言語に関する理解も深いので、既にもっている知識をもとに、短期間で新しい言葉を習得できるでしょう。これら語学教師とエスペラント語に関心の高い人たちで、通信教育、現地の学習グループ、テレビ教育を利用して、かなり集中的にエスペラント語を学習するといいでしょう。

エスペラント語がEU中の学校の第一外国語になれば、子ども達はみな、自分の母語が何語であるかに関係なく、ほぼ2、3年で話したり、書いたりできるようになり、理解し合えるようになるのです。数十年後には、EUで通訳が要らなくなり、よりスムーズに仕事が進み、もっと民主主義的になります。また何よりも、何十億円という経費が削減できるのです。現在、英語を母語としない国の代表の中には、あまり上手に英語を使いこなせないせいで、英語が母語の代表を相手に議論できなかったり、議論する気になれなかったりする人がたくさんいます。あるヨーロッパ議会委員の話によると、そのせいで、議会ではただ黙って座っているだけという人もいるそうです。通訳がいつでも見つかるとは限らないのです。エスペラント語を導入すればEUがより民主主義的になるというのは、つまり、一般の人々でもヨーロッパ委員会で何が起こっているのか容易に理解でき、多くの人がEUに対して抱いている疎外感を一掃し、また少なくとも減らすことができるからです。これがこの巨大なEUで実現すれば、日本、アフリカ、国連も後に続くことでしょう。

移民

EUの若者がエスペラント語のほかに、もう一つ別の言語を習わなければいないとしたら、英語をえらぶべきでしょうか。英語が必修言語でなければならない理由は、もうどこにもないのです。EUの若者が外国語を2つ学ぶのなら、その第二外国語は、地域の言語教育の状況に応じて、彼らが自由に選んだらいいのです。若者の多くは、おそらく英語を習いたがるでしょうし、ほかにはフランス語や中国語を勉強したがる者もいるでしょう。EUには移民がたくさんいるのですから、自分らの祖先の言葉を学びたいという選択もあるでしょう。このような人間の活動が、文化の交流を推し進め、世界中の国々に影響を与え、また世界の国から影響を与えられるのです。

それでは、英語を話す世界から、私たちは一歩遠ざからなくてはいけないのでしょうか。いいえ、そんなことは決してありません!彼らも、以前、私たちが自分の言葉が国際語ではなかったことを認めたように、英語がもはや国際語ではなくなったこと(実際今まで英語が国際語であったことはありませんが)を認めるようになるでしょう。国際語はエスペラント語であり、それを学ばなくてはいけないのだということがわかるはずです。そうして初めて、私たちは同等の立場に立つことができるのです。

ドン・キホーテ

エスペラント語により、一般の旅行客でも、外国の人の言っていることが理解できたり、また話せたりするようになります。そして外国や外国の文化への関心が高まり、言語の関心も高まるはずです。今に、英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語だけでなく、デンマーク語、日本語、アラビア語、エストニア語といった言語を勉強する人も増えるでしょう。若いころ、私はストックホルムでスペイン語を勉強しているという港湾労働者出会いました。彼は一体なぜスペイン語を勉強することにしたのでしょうか?実は、彼はセルバンテスのドン・キホーテを読んで、スペイン語やその文化に興味を抱くようになったのだそうです。また彼は、原語でドン・キホーテを読めるようになりたいとも言っていました。このような例について、エスペラント語入門でもっとお話したいと思います。

語学天才のエリートたち

エスペラント語という国際語で対抗しなければ、EU連合の共通語は英語になってしまうでしょう。少なくともこれから50年間、EUでは英語が国際語として使われるでしょう。そして、EUの義務教育の学校で行われている教育をすべて英語に切り替えないことには、英語を自国語としない国では、語学に長けたエリートしか英語を使いこなせないという状況に陥るでしょう。しかしそんなことをしてしまったら、ヨーロッパのほかの言葉や文化が追いやられてしまいます。そして世界は貧弱になってしまうのです。

世界中の国々

世界中の多くの学校が、もうすでにエスペラント語を学習科目に加えようと動き出しています。22カ国110大学でエスペラント語が教えられています。日本を始め、中国、韓国、ブラジル、スウェーデン、フランスなどの国々です。

北京のラジオ番組を聴こう

2008年までに、中国語がインターネットの最大言語になるといわれています。これから20年もしないうちに、世界を率いる科学国家かつ貿易国家であるアメリカに、中国が取って代わってしまっていたとしても何の不思議もありません。世界には、英語話者の3倍もの中国語話者がいるのです。それにもかかわらず、中国人が科学の新発見などを英語で発行するのは不思議ではありませんか?そうです!もしエスペラント語を始めないなら、私たちは中国語を学ぶべきなのです。現在の中国の指導者は、エスペラント語を国際語にすることに肯定的な態度を示しています。それは、北京でエスペラント語の日刊ラジオ番組が放送されていることや、少なくとも雑誌三冊がエスペラント語で発行されていることからわかります。

明日ではもう遅い

私たちは自分たちに対してだけでなく、次の世代に対する責任も同時に背負っているのです。みなさんは、私たちの次の世代にどんな世界を残したいと思いますか。エリートが英語と中国語を操り、ほかの言葉が二流言語に甘んじている世界を望みますか。ほぼどの国でも、次世代の人々が学校教育の大半をエリート言語の勉強につぎ込み、それでもなお十分に習得できないままに終わることを望みますか。世界中のそれぞれ固有の文化が、アングロ・サクソン文化、中国文化、その他の優勢言語の文化に次々と染まっていく世界を望みますか。決定権はあなたにあるのです。進むべき道を選んでください。どの言葉を支えていきたいのか選んでください。もしあなたが多様な言語と文化が存在する世界を選ぶのだとしたら、それはエスペラント語を選ぶということです。ほかに選ぶ道はないのです。進む道を選んでください。言葉を選んでください。明日ではもう遅いのです。

私は決して、英語や中国語、またこれらの文化に対して、反感をもっているわけではありません。ただ、英語や中国語以外のほかの言葉や文化にも、生き残る余地が必要だと言いたいだけなのです。

世代は移り変わります。私たちの後に少しでもよりよい世界を残すために、努力しなくてはならないのです。言葉の壁を越えて、みんなが自由に言葉を交わせる世界です。様々な言葉や文化が生きていて、色々な違いがあるけれど、みんなの共通の言葉も存在する世界です。

私たちが共通の言葉をもって出会える日は、みんながお互いを同じ仲間だと思える、お互いを許し合える、その可能性が大きく拡がる日なのです。


© Hans Malv, 2004