英語とスウェーデンにおいて拡大する英語の影響

ヤン・スヴァルトヴィック教授(Jan Svartvik)は自分の著書に、こう書いています。

「スウェーデンの高校の中には、『バイリンガル教育』を行っている学校があります。バイリンガル教育とは英語で教育を行うことであり、今のスウェーデンでは英語の授業のみでなく、物理や数学や歴史といったほかの科目でも英語で授業が行われています。確かに、学生たちに実際に使える道具として英語を使わせ、本物のバイリンガルを育成するといったアイデアは評価できますが、英語による一般科目の教育は、スウェーデン語を母語にもつ学生にとっては不利な面もあるのです。・・・」

「物理の授業で普段英語を使って教えていると、学生は言語の表す微妙な意味合いを正確に理解することができず、学習科目について表面的な内容しか学べないケースが多くなります。英語を母語の代わりに使って勉強してきた学生が、スウェーデン人教師が英語で行う大学の講義に出ると、教師の英語能力の低さが講義のレベルを下げ、コース自体が単調で活気がないものになると不平を漏らしています。・・・」

「教育手段の言語として英語を使うことは、その科目の教師に非常に高いレベルの英語力を要求します。スウェーデンの高校で行われた調査によると、教師の英語力が足りないこと、また教師らも、教育言語として英語を使うメリットについて、明確にできなかったことがわかりました。・・・」

「特にフランスでは、力をもつ政治家たちが、世界が英語ばかりで溢れ、ほかの文化の創造性や多様性をつぶしてしまうかもしれないと、大変警戒しています。スウェーデン語言語管理委員の多くも、スウェーデン語がいつか消えてしまうのではないと危惧しています。・・・」


© Hans Malv, 2004